訪問看護の報酬制度まとめ

自身が訪問リハ、訪問看護に関わって15年たちます。特に訪問看護から行く訪問リハビリが多いと思いますが、その報酬(訪問看護も含めた)は複雑であり、十分な理解が必要と感じています。

以下に最新の医療・介護報酬改定を踏まえてまとめてみましたので、皆さまの報酬関連の知識のアップデートの一助になればと思います。

その利用者は医療保険?介護保険?

 最初に躓く点は、利用者が医療保険なのか介護保険なのかの選択です。病院から行く訪問リハビリと違う報酬体系である訪問看護についての保険選択の流れはしっかりと身に着けておくべきでしょう。

①介護保険か医療保険か

まずは介護保険なのか医療保険なのかを判断する必要性があります。分かりやすくフローチャートにまとめさせていただきました。

 訪問看護?医療保険か?のフローチャート 🔗介護保険・医療保険の選択(訪問看護ステーション)

またこの中に示された、厚生労働大臣が定める疾患 も知っておく必要があるでしょう。

厚生労働大臣が定める疾病

  1. 末期の悪性腫瘍
  2. 多発性硬化症
  3. 重症筋無力症
  4. スモン
  5. 筋萎縮性側索硬化症
  6. 脊髄小脳変性症
  7. ハンチントン病
  8. 進行性筋ジストロフィー症
  9. パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって、生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限る)
  10. 多系統萎縮症(線条体黒質変性症,オリーブ矯小脳萎縮症 及びシャイ・ドレーガー症候群
  11. プリオン病
  12. 亜急性硬化性全脳炎
  13. ライソーゾーム病
  14. 副腎白質ジストロフィー
  15. 脊髄性筋委縮症
  16. 球脊髄性筋委縮症
  17. 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
  18. 後天性免疫不全症候群
  19. 頸髄損傷
  20. 人工呼吸器を使用している状態

この中で一つだけ変わった項目がないでしょうか。そう 9:パーキンソン病関連疾患 です。ヤールの重症度分類ステージ3以上 かつ 生活機能障害度がⅡ度又はⅢ度のものに限るという項目です。こちらに関しては、別のページで詳しく述べているので、そちらのリンクをご参照ください。🔗パーキンソン病関連疾患

そしてもう一つ、 別表8:厚生労働大臣が定める状態等 があります。こちらは疾病ではなく 状態 となります。

そう 別表7に示す疾病ではなく別表8で定める状態であれば医療保険が選択 されることになります。

ポイント

  1. 在宅悪性腫瘍患者指導管理若しくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者又は気管カニューレ若しくは留置カテーテルを使用している状態にある者
  2. 在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理、在宅中心静脈栄養法指導管理、在宅成分栄養経管栄養法指導管理、在宅自己導尿指導管理、在宅人工呼吸指導管理、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理、在宅自己疼痛管理指導管理又は在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態にある者
  3. 人工肛門又は人工膀胱を設置している状態にある者
  4. 真皮を越える褥瘡の状態にある者
  5. 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者

これを見る限り、在宅で医療依存度、医療的処置が必要な状態の方に関しては医療保険が適応されることがわかると思います。

②特別指示書について

そしてもう一つ 特別指示 というものがあります。略して トクシジ と呼ぶことが多いですね。名前の通り特別指示書ですので、緊急性が高い場合に出される指示書の事です。

 特別指示書とは利用者の状態が急激に悪化し、頻回の訪問看護が必要な状態になった場合に、医師の診察の結果出される指示書のこと

ポイント

  • 通常の 訪問看護指示書が交付されている ことが前提である。
  • 指示書の有効期間は 14日間 (通常の訪問看護指示書は最大6か月)と短い。
  • 月を跨いでのカウントでも大丈夫である。月を跨いだ場合、新たに14日間の特別指示書を交付できる。
  • 週4回以上の訪問が実施できる。
  • 交付されるのは 基本1か月に1回 だが、気管カニューレを使用している、真皮を超える褥瘡 の場合 月2回(連続で最大28日)発行される。

特別指示書に関しては、全国保険医団体連合会により様式が示されています。(別紙様式16)

この様に利用者に頻回の訪問看護(医療的ケア)が必要になった場合に出されるわけですので、それだけ緊急事態であることも認識しておきましょう。

内容では、病態悪化時の褥瘡処置、退院直後の各瘻孔処置、傷の処置、点滴など、毎日の訪問による対応が必要な場合が対象となりますので、主治医からの指示を仰ぐとともに、主治医と連携を取りつつ医療的看護を提供していきましょう。

以上、特別指示書についてでした

③介護の基本報酬について

介護被保険者の1カ月当たりの上限額から覚えていきましょう。確実に覚える必要は、ないですが、何となくこれぐらいかな。というあたりはつけられる程度に覚えておきましょう(報酬改定ごとに変わるので、その点も注意しましょう)

要介護の区分支給限度額

  • 要支援1:5,032単位
  • 要支援2:10,531単位
  • 要介護1:16,765単位
  • 要介護2:19,705単位
  • 要介護3:27,048単位
  • 要介護4:30,998単位
  • 要介護5:36,217単位

この様な区分支給限度額になります。大体ですが 介護度1上がると5000単位増える と覚えておけばよしでしょう。

④地域区分による収益格差

 この介護保険1単位当たりの円換算が地域によって変動する 現在1等級~7等級+区分外 の8区分となっている。

 これ以外にも住まいの地域の物価や不動産の値段等を鑑みて地域区分が定められています。例としては東京は1単位=11.4円、地方田舎都市では10.17円と大きな開きがありますが、その時点での物価と連動するため、特に都心部だと高くなりますね。

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000566688.pdf

厚生労働省 介護給付費分科会 172回 R1.11.15
鳩尾

たかが1円・数銭の違いではないか?と思っていないか。

ちがうんですか??

弟子
鳩尾

ばかもの、「塵も積もれば山」となる。これを見なさい。

1円、数銭の違いですが、事業所毎に入る収入は1カ月単位で考えると大きな差が出てきます。

東京世田谷区と富山市で比べてみよう

条件:一人当たりの月利用単価 8,000単位、事業所の利用者数 100名

世田谷区の事業所 人口約94万人,広さ59k㎡

一人当りの利用額:11,4円×8,000単位=91,200円

1カ月:91,200×100=9,120,000円

1年 :9,120,000×12=109,440,000円

富山市の事業所 人口約42万人,広さ1,242k㎡

一人当あたり利用額:10.21×8,000単位=81,680円

1カ月:81,360×100=8,168,000円

1年:8,136,000×12=98,016.000円

1年で事業所収入の開きは 約1, 200万 も開きが出てしまう。

都会の固定費用である家賃が10万円近くであったとしても十分なおつりがくる額になっている。加えて、都内だと自動車での訪問が難しく電動自転車での訪問がほとんどなのを考えると、自動車の維持管理費用が掛からないため、実は 都会の方が高収益を出しやすい構造 になっている。

事務所

④介護報酬の基本報酬

そして、介護保険はさらに 基本報酬+加算 の形で算定されます。

ここでは基本報酬について説明していきます。

種類介護(単位予防’(単位)
20分未満(20分以上の訪問が週1回以上プランにあることが前提)313単位302単位
30分未満470単位450単位
30分以上~1時間未満821単位792単位
1時間以上~1時間30分未満1,125単位1,087単位
理学療法士等の訪問(20分あたり)1日2回を超える場合は90/100、で週6回まで算定可293単位283単位
介護の基本報酬単位

これを見て気づく点はないでしょうか。

そうです、理学療法士の訪問が病院からの訪問リハビリと同様に20分刻みとなり、報酬も若干ですが低く設定されています😢

あまりにも訪問リハを大量に行う偽訪問看護ステーションの横行により、療法士にしわ寄せがきた結果、報酬制度が下げられてしまっている印象です。現場としては、必死に看護と協働で訪問を行っているのに、なんとも「憤懣やるかたなし」ですね。

でも文句を言ってもしょうがありません。厚労省の打ち出してくる報酬で収益を出すことのできる体制を、改定ごとに見直していく良い機会だと考えています。

介護報酬の加算について

介護報酬の加算について

 加算は、詳細については個別の項目で説明を行いたいと思います。ここでは、どれが支給限度基準額、枠内算定加算で、どれが支給限度基準額、枠外算定加算かを整理していきます。

そもそも支給限度額内・外とは何か?

一つ前の項目で区分ごとに支給限度額が要支援1~要介護5まで決められていますが、支給限度額内の加算はこの加算の中に抑える必要がある加算になりますので、給付管理・サービス管理を行っているCMと上限オーバーにならない様にしっかりと管理を行う必要があります。

限度枠内

  • 初回加算
  • 夜間早朝加算
  • 深夜加算
  • 退院時共同指導加算
  • 複数名訪問加算
  • 長時間訪問看護加算
  • 看護介護職員連携強化加算

などがこれにあたります。

一方、支給限度額の枠外で算定してよい加算があります。緊急時、ターミナル等の予測できない(プランで加算発生を予見出来ない)もの、また、医療的ケアが必要なもの、ステーションのストラクチャ(職員体制)が評価されるものがこれにあたります。

支給限度基準額外

  • 緊急時訪問看護加算
  • 特別管理加算1・2
  • ターミナルケア加算(介護予防は除く)
  • サービス提供体制強化加算
  • 同一建物減算

などが当たります。

それぞれは詳しく別項目で説明していきます。