始めに
こんにちは 鳩尾 です。
バランスは一般的な用語で使われていますが、理学療法的概念で考えると定義するのが難しいでしょう。特に文章で完結に説明するのは難しいですね。
言語として扱われる場合、前後の文脈で意味が微妙に違う場合もあるため、安易に使わない様に筆者は心がけています。
バランスの定義
それでは、改めてバンランスとは何でしょうか?
切り口としては3つの見方が出来るとの報告があります。
望月久. 理学療法におけるバランスの捉え方―概念・評価・改善へのアプローチ―. 理学療法学, 2005, 32.4: 192-196.
- 姿勢反応としてのバランス:姿勢の変化や外乱に対する立ち直り反応や平衡反応
- 生体力学的なバランス:身体重心線と支持基底面の関連性としてのバランス
- 検査の結果としてのバランス:理学療法における評価バッテリーを使用した場合のバランス
大きく分けて上記の様に3つに分類されます。
姿勢反応としてのバランス
一般に姿勢の変化や外乱刺激に対する立ち直り反射や、平衡反応を指します。
内耳系や前庭器官系等の一般にいうめまい系に当てはまるケースです。また、倒れそうになった場面で、反射的に体が動く反応もこれに当てはまるといえます。
耳鼻科系で関わるめまいの種類ですね。
もう一つは深部感覚系のフィードバックが不十分な場合に起こるバランス能力の低下です。脳卒中後の後遺症で麻痺が残る場合に、深部感覚障害として現れ、自身の足や手がどこにあるかわからないため起こるバランス能力の低下です。
これに関しては視覚的フィードバックが働くことである程度補正が出来ますが、夜間など視界が不十分な場合に不安定になりやすいですね。
理学療法的に問題になる場合は後者のケースが多いと思います。
生体力学的なバランス
人は支持基底面の範囲内に、自身の重心がないとバランスを崩し転倒に繋がります。
高齢者でバランス能力が低下した場合、支持基底面が狭い状況で重心が外に出てしまう場面で、とっさの踏み出しが出来ないことで転倒に繋がってしまいます。
物につかまって歩くことや、杖を使って支持基底面を広げて安定した歩行を補完しようとする戦略を図ろうとします。
検査の結果としてのバランス
理学療法評価の中には、バランス能力の評価方法があります。
静的バランス検査「閉眼での両脚立ち」・「片脚立位」・「Mann検査」
動的バランス検査「タンデムテスト」「TUG」「BBS」
など多くの検査、評価の結果でバランス能力を定量的な数値として算出し、その方のバランス能力の状態を客観的なデータとして扱う場合に必要な項目です。これに関しては理学療法として、関わることが多い項目であるとともに、知っておかなければならない知識と言えます。
バランスについて言葉の定義
もう一歩踏み込んだ概念として、簡潔に定義してみます。
望月久. 理学療法におけるバランスの捉え方―概念・評価・改善へのアプローチ―. 理学療法学, 2005, 32.4: 192-196.
- バランス:外部から観察される現象自体
- バランス能力:バランスに関わる身体機能全般
- 平衡機能:バランス能力を構成する要素の中核をなす神経機能
の様に定義すると分かりやすいでしょう。
バランス能力の評価方法
それではどのように評価すればよいのでしょうか。
いくつかの評価方法があります。その中でも代表的な性的平衡化検査を述べていきます。
- Romberg検査:開眼、閉眼で、閉脚時での両脚直立検査
- Mann検査:つま先と踵を接した継ぎ足位で立位姿勢を保持する検査
- 単脚起立検査:片脚で立位姿勢を保つ検査
それぞれの検査は、適時対象者の年齢や症状、状態に合わせて実施する事が望ましいが、筆者は簡易的な検査として行う内容と考えています。
また、簡易的な検査でおおよその歩行能力の相関を認める報告がありましたので、こちらもご参照ください。
望月久. 理学療法におけるバランスの捉え方―概念・評価・改善へのアプローチ―. 理学療法学, 2005, 32.4: 192-196.
上記研究結果を見る限り、片脚立位や継ぎ足位が自立していない場合は、安定した補助具なしの屋外歩行を推奨できないと判断を下す一つの材料になるかと思います。
Berg balance scale(BBS)
また、十分な評価・検査時間が得られるのであれば、Berg balance scaleの評価を行う事をお勧めいたします。
- Berg balance scale: 14項目の動作課題から構成され各0~4点の5段階評価、合計56点で総合的バランス能力の指標となります。
以下にBerg balance scale(BBS)の検査項目を挙げさせて頂きます。
- 椅子からの立ち上がり
- 立位保持
- 座位保持
- 着座
- 移乗
- 開眼立位保持
- 閉眼立位保持
- ファンクショナルリーチ
- 拾い上げ
- 振り返り
- 360度の方向転換
- 踏み台昇降
- タンデム立位
- 片足立位
上記の様に検査項目が多いため十分な事前学習が必要となります。これだけでも高齢者の場合、良い負荷運動になりそう!
YouTube に短時間にまとめられた検査方法の動画がありましたので、お手すきの時間があればご確認ください。
そして、この検査のカットオフ値の目安として
とされており、フィードバックする場合の参考にしていただければと思います。
まとめ
以上バランスについて簡単ではありますが、定義、評価方法を述べさせていただきました。
日々の臨床のお役に立てれば幸いです。